要所要所の角度

礼法を習う際に、跪座の状態から上体を前に倒し、胸を腿につけるという動きがある。
横から見たら「Z」状に体を折り畳んでいく。正座の深い礼の跪座バージョン、といえばいいのだろうか。

その場の皆さんが出来るのに、私はできない。
腰を折り込もうとすると、踵から尻が浮いてしまう。

あまりに「できない」「できない」と言っていたら、先生が一言。
「うーん・・・。体で覚えるしかないわね」
そうおっしゃって、壁を使っての練習法を教えてくださった。

壁を背にぴったりつけて、跪座の姿勢になる。お尻は壁についている。
その状態で、お尻を壁から離さずに、もちろん踵からも離さずに、腰を折り込んで上体を倒していく。

できない。

何日もかけて、しつこくやっているうちに突然、腰椎周りがバキバキと音を立て、よく動くようになった。
「動くようになった」ということは、今まで「動いていなかった」のだ。

この後しばらくして、体のバランスが変ったことを受け、ギックリ腰に見舞われるのだが。
好転反応だから、しょうがない。

このときの経験から、「角度って大事なんだな」と理解が出来るようになった。
体を折るときの、折り込む角度が全く違っていたのだ。

人間の体は、横から見ると一直線にまっすぐではなく、自然な曲線を描いている。
普段の姿勢が悪いと、本来のカーブと違う形を形成してしまう。

骨盤の後傾。
ストレートネック。
板のように一直線な背骨。

悲しいがな、30代くらいで体の悪癖は固定されてくる。
治さず放置すれば、首が痛い腰が痛いと嘆く「地獄の40代」が待っている。

「姿勢を正しく」とは、ただ背を伸ばせばいい、というわけではない。
骨組みが本来の正しい角度を維持できているか、ということに尽きると思う。

正しく体が機能できる状態であれば、血流が良く「脳までしっかり酸素が送られる」ということだ。当然、視界も明るくなれば、視機能も正常に働くはずである。

自分自身まだまだ勉強中だが、可能な限り「本来の体」を目指して、改善を重ねるよう努めたい。