悪姿勢による頭痛・肩こり

40歳の頃、私の体はズタボロだった。

美容院でシャンプーをしてもらう際、のけぞった首が痛くて辛い。
自転車に乗ったときには、後方確認をしようにも首が後ろを向いてくれない。

そこまで凝っているのに、整体には行こうとしなかった。
リラクゼーション。肉体的、精神的な緊張をほぐし、リラックスさせる行為・施術。

「たかが揉んでもらうだけで何千円も取られてしまう」と、時間もお金も費やさない。
ゆるめなくてはならないのに、「ゆるめる」という発想は欠落していた。

「整体行きたい」「でも高い」を何ヶ月も繰り返し、結局は整体院に通う決心をする。
もう辛いのだ。少しでも良くなるなら、健康を金で買おうではないか、と。

そして手技を受けた。
女性の先生だったが、筋膜に働きかけるような優しく痛みを感じさせない手法で、効果は抜群だった。

半年くらいかけて「少し楽」になり、次の半年で鉄板のようだった背中が人の硬さになった。
さらに次の半年で腰に感覚が戻り、二年経つころには象のように太かった足首はアキレス腱がどこにあるかわかる程度に改善した。

会社での仕事はパソコンワーク。ややこしい分析を行うのが得意で、気がつけば画面に食い入るように集中している。
腰が丸まっているから、背中も丸まる。背骨がぐにゃりと曲がっていれば、その上にある首が重たい頭を上手に支えることなど出来るわけがない。

腰椎を立て、胸を張り、肩甲骨を引き、顔はしっかり前を向かねばならないのだ。
この姿勢が崩れると、力を入れるべきところに力が入らず、余計な場所に負担がかかり、酸素が全身に行き渡らず、不調が起きる。

当時の私の不具合は、姿勢を正すことで、ある程度までは目に見えて改善した。

少なくとも、悪姿勢とメンテナンス不足によって出来上がった、鉄のように硬い背中・触っても感覚のない腰・さつま揚げを巻きつけたような足首は、人間の肉に戻れたのであった。