陰陽の病理
人体の陰陽は気候変化の影響を受け、変化する。
陰陽の関係は、平衡が保たれた状態が生理的であり、失調が生じると冷えやほてりなど寒証・熱証の症状が起こる。
陽虚
陽の機能が低下した状態。相対的に陰の機能が陽より旺盛になり、寒がり、四肢の冷えなどの寒症状が現れる。体外からの侵襲ではなく、気の不足により生じるため虚寒ともいわれる。
陽 = 気の温照作用の現れ → 気が減少すると陽の機能も低下する
【症状】
陰盛(実寒)と陽虚は、ともに冷えが体内に存在するため症状は同一のものが多い。陽虚は気虚が発展し、温胸作用が低下した状態であるため、気虚症状が存在する。寒証の症状に加えて気虚症状が存在し、脈弱となる。
寒証症状:寒がり・四肢の冷え・顔面蒼白・腹痛・下痢・小便清長・脈遅
気虚症状:自汗、精神疲労・倦怠感・食欲不振・息切れ・脈弱
陰虚
陰の機能が低下した状態。
相対的に陽の機能が陰よりも旺盛になり、ほてりやのぼせなどの熱症状が現れる。
(体内に過剰になった熱ではなく、陰液の不足で生じた熱のため、虚熱ともいわれる)
陰液の不足の進行や他の要因で熱が助長され、熱症状が顕著になった状態を陰虚火旺という。
陰虚の症状には血虚・津液不足・精虚の症状を伴うことが多い(陰液不足)。
陰液(血・津液・精)が減少 → 陰の機能は低下する
【症状】
のぼせ・五心煩熱・盗汗・頬部紅潮など、発症が部分的であることが特徴。
①ほてり・のぼせ
虚熱により、熱が上部や体表に現れる
②五心煩熱・手足心熱
手掌と足底に熱感がある: 手足心熱
手足心熱に胸部の熱感や不快感が加わる: 五心煩熱
(虚熱が部分的に人体各所に現れた状態)
③盗汗(寝汗。睡眠中に汗を多くかき、目覚めると汗が止まる)
睡眠時は覚醒時に比べて多くの陰液が臓腑におさまり滋養する
↓
全身の陽を抑制する機能が減弱し、虚熱の程度が強くなる
虚熱が旺盛になる
↓
体内の津液は気化され、汗として外へ漏れる
④頬部紅潮
虚熱は実熱に比べて熱量が少ない
↓
熱症状は顔全体ではなく、頬のみに現れる場合が多い
⑤消痩(痩せた状態のこと)
熱により陰液が損傷される
↓
滋潤する作用が低下して消痩となる
(陰液の不足により、肌肉を養うことができないと痩せる)
⑥舌質紅・舌苔少・脈細数
体内の熱は、身体所見として紅い色となって出現する
↓
舌においても紅いのは熱の現れである
苔は津液の盛衰を反映する
↓
熱によって津液が損傷されると舌苔少(苔が少ない状態)となる
陰液が少なくなると血脈内を充足することができない
↓
脈細となる
熱が体内に存在すると推動する力が強まる
↓
血の循行も速くなり、脈数(頻脈)となる
(脈細は虚証を表し、脈数は熱証を表すため、脈細数は陰虚の典型的な脈状である)