津液の病理

津液の病態は、津液の不足と津液の停滞の2つに大別される。

津液の不足による病態

津液不足

津液が減少し、量的に不足した病態。

【原因】

①飲食物の摂取が不足 → 津液を化生する量が減少する
②過剰な発汗や激しい下痢 → 津液が流失する
③体外から侵襲、もしくは体内で発生した熱 → 津液が損傷される

【症状】

①口や咽喉の乾き
  津液の不足
   ↓
  口腔内を潤すことができない

②皮膚や髪の乾燥
  津液の不足
   ↓
  皮膚や髪を潤すことができない

③乾燥便や尿量の減少
  津液の不足
    ↓
  大便は乾燥し、尿量も減少する

津液の停滞による病態

痰湿

停滞し生理物質の流れを阻む。
身体のあらゆる部位で滞り、気・血などの運行を阻害する。
慢性化しやすく治療期間も比較的長くなることが多い。
痰湿は形態が様々であるため、症状も多岐にわたる。

津液が停滞ないし凝集
 ↓
本来の生理作用が発揮できなくなる
 ↓
人体には不要な物質となる
人体に不要となった水液
 ↓
病理産物に変化
 ↓
その形態に応じて湿・水・飲・痰と呼ばれる

湿・水・飲・痰は共通の特徴を有し、明確に区分しづらいため、水湿・水飲・痰湿・痰飲などと呼称することが多い。

【原因】

脾・肺・腎の機能が低下 → 津液を正常に代謝することができない
肝の機能失調により生じた気滞の影響 → 津液の運行が阻害される
多湿な環境での生活、雨に濡れる、頻繁に水に浸かるなど → 津液の停滞が起こる
④多飲など水分を過剰に摂取する → 体内に輸布しきれない水液が津液に化生されず、そのまま痰湿に変化する

湿

水液のこと。
湿が発生する原因 = 臓腑の機能失調や水分の過剰な摂取など。
湿が体内に停留すると、身体の重だるさ、浮腫、下痢などの症状が起こる。
湿によって起こった症状は、多湿や降雨などの環境要因で増悪することが多い。

湿より濃密な状態で停留した水液のこと。
水と湿は臨床上、明確に区分できず、出現する症状が同様であるため、水湿として論じられることが多い。

水よりさらに濃密な状態で停留した水液のこと。
腹部・胸脇部・皮膚などに停留することが多い。
停留する部位により腹鳴・動悸・喘息・浮腫など固有の症状が起こる。

湿・水・飲が凝集して固形物に近い状態になったもの。
気・血の流れに沿って全身に移動し、身体のあらゆる場所で症状を起こすが、比較的上半身の症状が多い。
特徴的な症状 = 咳嗽・動悸・眩鐘・頭痛・意識障害・精神障害
その他、食欲不振・皮膚疾患・運動障害・腫瘍など多様な症状が起こる。